|
今日で、ちょうど1年。 私が木の葉の里にきたのは、去年のちょうど今日。 あの時も、今も必死なことに変わりはないの。 さよならの言葉 2 「覚悟は出来たかい?」 え? ようやく届いた言葉にたんぽぽのような黄金色の髪をした、綺麗な男の人はふわりと笑う。 どこかで見た顔・・・・。 誰かと重なる面影は気のせいだろうか。 「あの、覚悟ってなんの」 今日の夢ではしゃべっても目が覚めないらしい。 「さよならを言う覚悟だよ。」 「?!!!!!!ちょ、なんで。は?・・・うそでしょ?」 カカシさんの声で目覚めると、視界にはめずらしく取り乱す姿が映る。 「・・・カカシ、・・・さん?」 「なんで、やだ!オレヤダよ!!!」 次第に覚醒する頭に、これが夢の続きではないことを知り カカシさんに抱きしめられる傍ら、手のひらを差し込む朝日に照らしてみると明らかに透けている。 どこか枠の外から見ているような感覚と 視界の端に映る、窓際に飾られた2つの写真。 あぁ、そっか。 だからか。 にしたって、突然すぎやしませんかね? 置いてく彼に、なんの説明も出来ないなんて。 ・・・って、突然にしたのはあたしだ。 なんであの朝、カカシさんに言えなかったんだろう。 ごめんね、カカシさん。 あなたの先生はあんなに前から伝えてくれていたのに。 あっという間に消えていく身体。 来る時は穴に落ちたのに、帰りはこんなかんじなんだ。 もう残りわずかというところで、なんとかが告げた言葉は。 「・・・・待ってて・・・・」 それだけを残して、は目の前で姿を消した。 「・・・・待っててって、・・なんで・・・・は?意味わかんない。」 意味わかんないよ。 永遠に時が止まったみたいに、しばらくその場から動けなかった。 「カカシ?!!」 ムサシが寝室に入るとそこには、1人ほうけるカカシがいた。 「・・・オイ、は・・・・」 「どうしよ、ムサシ。・・・・、元の世界に行っちゃった。」 それからのオレはなんでもないみたいにプライドと見栄だけで必死に装って、念のためにムサシを家に残し 新しく火影になった五代目の綱手様の元へと報告に行った足で三代目のところへ向かった。 「そうか・・・・が。どうりで今朝方ミナトのチャクラを感じたわけじゃ。」 「三代目、失礼ですがなにか手立てはないのですか。」 散々四代目に関する書物を読み漁った三代目ですら、今回のに関することはその片鱗すら掴めなかった。 必死に食い下がろうとするカカシに、今は隠居の身となったヒルゼンは。 「が待てと言うたのなら、待つしかあるまい。カカシよ。」 「そうですね・・・失礼しました。」 ドアに向かって歩くカカシが、最後に1度振りかえると 「今度は大人しく里にいます。」 その笑顔が寂しそうにしながらも決して諦めてはいないことに、三代目は少し安心した。 それからのカカシは抜け殻のようになりながらも、 子どもたちの視線をなんとかごまかし第七班としての任務をこなしていた。 しかし、報告書を出し終えても微塵も家に帰る気になれず任務をくれとそのまま受付に粘ることが多くなった。 「ですから、今すぐという訳にはいきません。」 「アンタオレのこと知らないの?」 本日分の上忍師としての任務を終えたカカシに、新たな任務を与えるとすれば それは受付である自分ではなく、頂点である火影以外には出来ないことをこの者は知っている。 「ごっ、五代目様にお聞きしなければ」 「だーかーら、別にオレがイイって言ってんの。」 五代目に門前払いされたからこーして受付にきてんでしょーが。 しかしそのようなことはしがない受付の中忍にとってはあずかり知らぬところ。 尚も続くカカシの冷気すら発しそうな視線とまとうオーラに、彼がそろそろ限界を迎えそうになったその時。 「カカシ?お前どうした。」 「・・・え?あ、あぁ。アスマ。」 たまたま報告書を出しに来たアスマに出くわした。 助かった、と中忍が心の底から思ったのは言うまでもないだろう。 「で?どした、七班の任務は終わったんだろ。」 「いーや、なんでもなーいよ。」 そのまま受付を去ったカカシに、アスマは慌てて報告書を机に無造作に置き捨て後を追った。 「ぃ、オイ!カカシ。」 めずらしく声を荒げて名を呼ぶアスマに、カカシはあくまでも今まで通りの態度をとった。 「なーに、ひげクマに追っかけられて喜ぶ趣味はないんだけど。」 「お前なんかあったのか?」 「べつに、なーんにも。」 柔らかに笑うカカシにアスマはその場ではそれ以上の追及は出来なかった。 普段どおり、でもどこか無気力。 いうなれば昔のカカシに戻ったよう。 そんな噂で里が持ちきりになり、特に女たちが目だって色めき立つようになった数日後。 アスマはなんとかカカシをいつもの居酒屋にまで引っ張ってきた。 いつもの奥の個室へ向かうとすでにそろっていたのは、紅とゲンマとイルカ。 「なによ、みんなして怖い顔しちゃってさ。」 面子がそろったところで、乾杯もそこそこに皆でカカシを取り囲んでの尋問が始まった。 「なァ、どうしたんだよカカシ。ついにに愛想つかされたんか?」 「いやアスマさん、それならが俺んトコに来てるはずっス。」 「2人とも冗談言ってる場合ですか!カカシさん?本当にどうなさったんです、 そういえば最近さんを見かけませんが。」 イルカのその言葉に、いくら任務で忙しい身とはいえ そういえばしばらくムサシと歩くの姿を見かけないな、と全員が思った。 「・・・・・。」 「は?ちょっと、カカシ。そんなんじゃ聞こえないわよ、もっと大きい声で言って」 煮え切らないカカシの態度に少しばかり苛立つ紅。 するとカカシは溢れそうなジョッキを手に取り、口元に持っていくと一気に中身を飲み干し始めた。 訳が分からない、という視線を方々で散らし それぞれが互いの胸のうちを十分に確認しあったところで、ダンッと空になったジョッキが机に置かれる。 視線が再びカカシに集中した。 「が、元の世界に帰った。」 「・・・・・は?」 「いや、カカシさんそれなんの冗談っスか。」 「・・・そんな・・・・」 「帰ったって。だって、そんな」 突然のことに全員が動揺を隠し切れない中、 カカシが狂ったように笑い出した。 「あは、アハハハハハハハ!!!そうだよ、はオレの目の前で消えてった。」 言葉にならないメンバーに、尚もカカシは線が切れたように笑う。 「・・・カカシ、」 見かねた紅がカカシの背中に手を置くと、カカシはピタリと笑うのをやめた。 「夢でしょこんなの・・・・・・だってがこの世に居ないなんて、ありえない・・・・。」 うつむき、声にならない声で搾り出すようにつぶやいたカカシに、 皆が真実だと知った。 いきなりすぎるとの別れに、誰もがどうしようもない喪失感を抱え込む。 「・・・ふざけんな。だって、そんな俺アイツになんも言ってないんスよ?!」 「ゲンマ、落ち着け。」 思わず立ち上がるゲンマに、それを諌めるアスマ。 「だって、・・・・だってそんなのって・・・ないっスよ。」 「オイ、それいつの話だ?」 「つい・・・2・3日前くらいかな。」 先代も五代目も知ってるよ、というカカシの言葉でなぜ言わなかったのかとは誰も言えなかった。 「カカシ、さん・・・・最後になんて?」 「待ってて、って。それだけ言って消えてった」 ねぇ、。 待っててって、そりゃいつまでだって待ってるけど。 でもさ、それっていつまで? オレさ がいなかった時にどんな風に生きてたかすら思い出せないんだ。 がいなければ食事もろくに出来ないオレに、 居なくなってすぐの頃は誰もがオレの心配ばかりしていた。 はい、突然の別れです。 悲しいかんじにしたい訳じゃないので、ご心配なさらずお待ち下さいね。 なんというか、ワタクシの中でトリップでは避けて通れない道といいますか(汗 次は現代に戻ったさんの様子から。 徐々に種明かしです。って、明かすほどのもんでもないんですが(汗 |